大阪大学ではほぼ全ての疾患で臨床研究を行っています。
臨床研究は後ろ向き研究と前向き研究の2つに分けることができますが、
双方ともに精力的に行っています。
神経膠腫、髄膜腫、頭蓋内胚腫、転移性脳腫瘍等のさまざまな脳腫瘍に対しての前向き研究、後ろ向き研究を行っています。
耳鼻咽喉科頭頚部外科と密接に連携をとりながら診療を進めており、機能形態温存を目的に化学放射線同時併用療法を多数施行しています。
放射線感受性が高い正常組織が複雑に入り組んだ頭頸部は、強度変調放射線治療(IMRT)が有用な領域のひとつです。
現在、限られた症例にのみ施行していますが、順次積極的に適応を拡大していく予定です。
IMRTを用いて正常組織の放射線量を限定することにより、治療後の様々な後遺障害を低減できる可能性があります。
唾液腺への線量を低下させることにより、治療後の口腔乾燥を軽減できることがわかっています。
その他の後遺障害のひとつに開口障害があげられますが、どのような照射をすれば開口障害の発症を予防できるのかは、残念ながら明らかになっていません。
そこで私たちは現在開口障害に着目し、その発生に関与する組織や放射線量を調べる臨床試験を施行しています。
近年、頭頸部癌においてヒトパピローマウイルス
(Human papilloma virus, HPV)は予後因子あるいは治療効果予測因子として注目を集めています。
HPV陽性腫瘍は治療効果が良好で予後も良いことが示されていますが、その他の腫瘍と治療法を変えるべきかどうかは明らかになっていません。
そのため、耳鼻咽喉科と共同でHPV陽性腫瘍に対する前向き臨床試験を実施しています。
肺癌に対する放射線治療の最適化を目指した検討を行っています。
また、胸腺腫等の縦隔腫瘍に対する検討も行っています。
食道癌に対する放射線治療成績、合併症の検討を行っています。
乳癌に対する放射線治療成績、合併症の検討を行っています。
肝臓癌・胆道癌・膵臓癌における放射線治療成績の検討を行っています。
また、日本の多施設における検討も行っています。
2000年に相次いで報告された臨床試験の結果から、
子宮頸癌に対する根治的放射線療法は化学療法との同時併用が標準的治療となっています。
しかし、局所進行子宮頸癌に対する放射線化学療法の治療成績は
未だに満足できるものではありません。
そこで当院では、再発予後因子を有する症例に対して、標準的なプラチナ製剤に加えて、
タキサン系の化学療法を加える同時放射線化学療法を行う臨床試験を行っています。
子宮頸癌・子宮体癌の根治手術後・根治的放射線治療後の再発は
大きな臨床的課題となっています。
再発部位が局所のみでも標準的には緩和的な化学療法がメインで行われ、
根治的な手術はQOLを大きく損なう術式がほとんどです。
そこで当院では、局所再発子宮癌に対して積極的に高線量率組織内照射を行い、
良好な治療成績を報告しています。
今後は長期の治療成績、または画像誘導小線源治療による
最適な線量パラメータの開発を行っていく予定です。
子宮頸癌術後に病理学的に再発予後因子を有する症例に対しては、全骨盤照射を追加することが多いのですが、腸管の合併症が多く臨床的課題となっています。
そこで当院では2010年より術後の全骨盤照射をIMRTで照射し、照射標的周囲の腸管をできるだけ避ける照射方法を導入しています。
また過去に標準照射法で照射した症例の線量・体積パラメータから適切な線量制約を確立するための解析を行い、今後のIMRTでの線量制約に役立てる予定です。
大阪大学では前立腺癌に対して、高線量率組織内照射単独による治療を
世界に先駆けて開始しました。
前立腺癌の治療は、手術、放射線治療、ホルモン療法など多岐に渡りますが、
放射線治療に関しては如何に前立腺に放射線を集中させ、
周囲の直腸や膀胱などの正常組織を避けられるかが重要です。
組織内照射では、前立腺内に治療針を刺入し内部から照射をするため、
線量集中性に優れています。
これまで既に、治療成績を多く論文報告しており、
その成績は国内のみならず海外からも注目されています。
また、外部照射ではリニアックによるIMRTによる治療を行っています。
リニアックに装備されているEPIDによるcone-beam CTを用いた
Image Guided Radiation Therapy(IGRT: 画像誘導放射線治療)を行っています。
これまで、CBCTによる被曝量を勘案した治療計画の立案などの研究成果を報告しています。
さらに、サイバーナイフを用いた超短期間の定位照射の臨床研究を開始しています。
(詳しくは、「倫理委員会申請内容」のページを参照ください)
これまでに、組織内照射による治療スケジュールを計画的に変更し、
線量の違いによる治療効果・副作用発生率に関する検討を行っています。
前立腺癌では寡分割照射が生物学的に効果的であるとされており、
その分割スケジュールの最適化は組織内照射単独治療を行ってきた
当教室の重要なテーマとなっています。
高線量率組織内照射においても、治療期間短縮のため、臨床研究を行っています。
画像誘導による外部放射線治療の高精度化により、周囲正常組織への障害の軽減が期待されます。障害の程度を画像などで客観的に評価することで、線量制限値の標準化を目指しています。
放射線治療後の前立腺癌の再発に対しては、ホルモン療法による救済治療が標準とされています。現在局所再発のみの前立腺癌に対する
救済組織内照射の効果・安全性に関する多施設共同研究に参加しています。
EPIDを用いたメガボルトコーンビームCTで
前立腺の体内移動を計測して得られたデータをもとに
骨照合を用いたIGRTにおける適切なインターナルマージンやセットアップマージンを
各々の患者因子に基づき検討します。
追尾機構を備えたロボット定位照射装置を用いて、5日間の治療で従来と同程度、あるいはそれ以上の成績を得られることを目指した臨床試験を行っています。
(詳しくは、「倫理委員会申請内容」のページを参照ください)
骨軟部腫瘍に対する放射線治療成績の検討を行っています。
小児腫瘍に対する放射線治療成績の検討を行い、放射線治療の最適化を図っています。
遠隔放射線治療の総合パッケージのモデルシステム作成(研究代表者 吉岡靖生)
の主旨にもとづき、研究成果物の一部を一般公開します。
マイクロソフト エクセルのファイルで、どなたでもダウンロードしていただけます。
遠隔放射線治療あるいは院内の放射線治療依頼フォーマットとして、
そのままでもご施設に合わせて改変された形でもご自由にご利用ください。
当方への許可願いやご連絡は不要です。
ただし、これらのファイルによる一切の責任は負いかねます。