
大阪大学では多くの疾患について臨床研究を行っています。
臨床研究は後ろ向き研究と前向き研究の2つに分けることができますが、当教室は双方ともに精力的に行っています。
脳腫瘍
- 髄膜腫に対するサイバーナイフを用いた定位放射線治療の成績
- 当院での髄膜腫に対するサイバーナイフ(CK)について評価し、有効性と安全性を示しました。
- 11C-メチオニン-18F-FDGデュアルPETトレーサーに基づく悪性神経膠腫の放射線治療標的設定:幾何学的および臨床的特徴の評価
悪性神経膠腫においてメチオニン-FDG PETを用いた放射線治療計画の有用性を示しました。
- 再発悪性神経膠腫の再照射に関する研究
- 再発悪性神経膠腫の再手術後、再照射に関する研究を立案中です。
頭頸部癌
- 早期声門癌に対する週6回加速照射法の治療成績
- 早期声門癌において、日本で広く用いられている週5回照射法よりも週に1回照射を増やした週6回加速照射法を用いることで、総治療期間の短縮化をはかり、高い有効性と安全性を示しました。
- HPV関連中咽頭癌に対する根治的放射線治療の検討
- HPV関連中咽頭癌に対して根治的放射線治療を施行した症例を評価し、その有効性と安全性を示しました。
- 血漿中のexosomal PD-L1による頭頸部癌患者の放射線治療効果予測
- PD-L1はがん細胞表面に発現し、免疫細胞からの攻撃から身を守る働きがありますが、最近がん細胞以外にも血中の細胞外小胞のPD-L1が知られるようになり、がん治療効果と相関があるのではないかと注目されています。
当科の玉利らは耳鼻咽喉科頭頸部癌外科学との共同研究で、根治的放射線治療を行った頭頸部癌患者の治療前の血漿中のexosomal PD-L1濃度が高い場合に放射線治療後の再発が多い傾向にあったことを示しました。
肺癌
- Ⅰ期肺癌に対するサイバーナイフを用いた定位放射線治療の成績
- 早期肺癌にたいしてサイバーナイフを用いたピンポイント照射法を行うことで、高い有効性と安全性を示しました。
- 転移性肺腫瘍に対するサイバーナイフを用いた定位放射線治療の成績
- 様々な部位から遠隔転移した肺転移に対して、サイバーナイフを用いたピンポイント照射を行い、高い有効性と安全性を示しました。
- 原発性肺癌に対するサイバーナイフ後の放射線性肺障害のリスク因子解析
- 原発性肺癌にたいしてピンポイント照射を行うと、まれに息切れや呼吸困難をともなう放射線性肺臓炎になることがあります。
そのような肺臓炎のリスクとなる要因を治療計画より求めることができました。
- 植込み型補助心臓装着患者に合併したⅠ期肺癌に対してSBRTを施行した3例
- 心不全などにたいして人工心臓(植込み型補助心臓)を装着している患者さんの寿命が徐々に延びており、早期肺癌を発症する人がでています。
ただ放射線治療が人工心臓にあたえる物理的、医学的影響はわかっていません。
当教室では3例の患者さんにおいて放射線治療をおこなったので、その有効性と安全性を調査しています。
- 超高齢者の早期肺癌に対する体幹部定位放射線治療の遡及的多施設共同研究
- 日本は超高齢化社会をむかえており、今後90歳以上の超高齢者に対する根治的放射線治療のニーズが増加することが予想されます。
本研究では90歳以上の早期肺癌に対するピンポイント照射の有効性と安全性をしめしました。
特に併存疾患が少ない(Charlsonスコアが低い)患者にはSBRTを推奨できるという結果でした。
肝臓癌
- 肝細胞癌に対する重粒子線治療の初期成績に関する研究(大阪重粒子線センターとの共同研究)
- 4cm以上の大きな肝細胞癌に対する重粒子線治療が保険適応になっています。
そこで大阪重粒子線センターで治療した患者さんについて、有効性と安全性を示しました。
- 肝細胞癌に対する重粒子線治療後に発症する放射線性肝障害の予測に関する研究(大阪重粒子線センターとの共同研究)
- 大きな肝細胞癌にたいする重粒子線治療をおこなうと、まれに肝障害がおこります。
その肝障害のリスクとなる要因を患者背景と治療計画より求めることができました。
子宮癌
- 子宮頸癌術後再発高リスクに対する強度変調放射線治療(IMRT)を用いた術後同時化学放射線療法の多施設共同非ランダム化検証的試験(JCOG1402)
- 当教室の元准教授、礒橋医師が中心となって子宮頚癌術後の再発リスクの高い症例に対する高精度放射線治療の安全性に関する臨床試験を多施設共同試験として行っています。
- 子宮頸癌再発症例における高線量率組織内照射を用いた再照射の研究
- 当教室の元准教授、礒橋医師が中心となって子宮頚癌に対する放射線治療後、局所に再発した症例に対する組織内照射を用いた再照射を多施設で解析し、有効性と安全性を示しました。
前立腺癌
- 前立腺癌に対する定位放射線治療の線量増加試験
- 前立腺癌に対する定位放射線治療において、線量増加試験(35Gy群、37.5Gy群、40Gy群)をおこない、治療効果と有害事象の点から最適な線量を示しました。
- 18F-PSMA-PETで同定された放射線治療後の前立腺癌局所再発に対する救済定位放射線治療
- 18F-PSMA-PETで同定された放射線治療後の前立腺癌局所再発に対する救済定位放射線治療(SBRT)の治療成績を評価し、有効性を示しました。
骨軟部腫瘍
- 転移性骨腫瘍に対する定位放射線治療の有効性と安全性の研究
- 様々な部位のがんから骨転移をきたして患者さんに対してピンポイント照射をおこない、その有効性と安全性を示すことができました。
その他
- 放射線治療が高齢癌患者へどの程度提供されているかについての検討(多施設共同試験)
- 厚労省が公開しているNDBオープンデータを用いて、高齢者に対する放射線治療の提供状況を調査しました。
- COVID-19が日本の放射線治療提供に与えた影響に関する研究(多施設共同試験)
- 2020年からCOVID-19のパンデミックがあり、世界中で大きな影響がありました。日本全国の放射線治療提供にどのような影響がでたかを調査しました。
他施設の多施設共同研究への参加
- JCOG1408
- 臨床病期IA期非小細胞肺癌もしくは臨床的に原発性肺癌と診断された3 cm以下の孤立性肺腫瘍(手術不能例・手術拒否例)に対する体幹部定位放射線治療のランダム化比較試験
- JCOG1910
- 高齢者初発膠芽腫に対するテモゾロミド併用寡分割放射線治療に関するランダム化比較第III相試験
- JCOG1912
- 頭頸部癌化学放射線療法における予防領域照射の線量低減に関するランダム化比較試験
- JCOG1916
- 病理学的N2非小細胞肺癌に対する術後放射線治療に関するランダム化比較第III相試験
- JCOG2011
- High volume転移を認める内分泌療法感受性前立腺癌患者に対する抗アンドロゲン療法への局所放射線治療併用の意義を検証するランダム化第III相試験
- JCOG2108
- 非小細胞肺癌術後オリゴ再発に対する全身治療後の維持療法と局所療法を比較するランダム化比較第III相試験
- JCOG2110
- オリゴ転移を有する進行乳癌に対する根治的局所療法追加の意義を検証するランダム化比較試験
- JCOG2209
- テント上初発膠芽腫に対する造影病変全切除術と造影病変全切除+FLAIR高信号病変可及的切除術とのランダム化第III相試験
- JCOG2303
- 可及的摘出されたIDH変異型星細胞腫の術後化学放射線療法に対する待機化学放射線療法の非劣性を検証するランダム化比較第III相試験
- NIVOIGERCC
- 転移性腎細胞癌に対するNivolumab+RTの試験