診療案内 舌癌組織内照射

舌癌組織内照射

大阪大学では舌癌を中心とした口腔癌に対して、高線量率組織内照射単独による治療を1991年より開始し、放射線治療として従来より行われていた低線量率組織内照射とその治療成績を比較する試験を行い、両者の成績が同等であると世界に報告しました。

舌癌の治療は一般に手術が行われることが多いですが、早期癌においてはMRIなどでリンパ節転移の有無を慎重に評価しながら、組織内照射による放射線治療で良好な治療成績が得られています。大阪大学では同歯学部放射線科及び大阪歯科大学と共同で舌癌の組織内照射に積極的に取り組んでおり、これまで多数の論文報告を行うなど日本を代表する治療施設の一つとなっています。

舌癌とは・組織内照射とは

一般に舌癌を含めた口腔の癌の発生は癌全体の発生の1-2%程度で、そのうち舌癌が約半数を占めますが、肺癌や胃がんに比べると頻度の低い癌といえます。

根治的治療法の選択肢としては、手術療法、放射線治療が挙げられます。手術療法の場合、切除に伴う治療後の機能低下が患者さんの不都合となることがありますが、極めて早期で見つかった癌の場合は手術後の機能低下は軽いとされています。

舌癌に対する放射線治療としては、組織内照射が中心的な役割を果たします。通常の外部照射では、下顎骨など周囲の正常組織に不要な照射をせざるを得ませんが、組織内照射では患部に直接針を刺し腫瘍内部に放射線線源を送り込むことで、局所に集中的な治療が可能となります。この治療法はリンパ節転移のない早期癌がよい適応ですが、同様に手術療法のよい適応でもあり、両者の治療成績はほぼ同等とされています。それぞれの治療法の長所・短所を比べて選択されるといいでしょう。

  • 舌癌の肉眼形状舌癌の肉眼形状
  • MRI画像MRI画像

低線量率組織内照射と高線量率組織内照射

組織内照射には低線量率と高線量率という、二種類の線源を用いた方法があります。それぞれに下記にふれるような特徴がありますが、当院では1991年から高線量率組織内照射による舌癌の放射線治療を開始しました。 従来低線量率線源を用いた治療を行っていましたが、高線量率治療と低線量率治療で治療成績を比較する臨床試験を行い、高線量率治療が低線量率治療と同等であることが証明されました。

低線量率治療、高線量率治療とも舌にガイド針または治療用チューブを刺して線源を送り込む方法は同様ですが、低線量率治療では線源を舌に治療期間中ずっと留置し、放射線が遮へいされた特殊な部屋で約一週間過ごす必要があり、患者さんの負担は大きいものでした。
一方高線量率治療では、患者さんは一般病棟に入院でき、一日二回ずつ数分間の照射で済むようになりました。治療回数は約10回です。また治療時間が短いため、治療時のみ、舌に近い下アゴを保護する装置を挿入するなどの工夫をして、副作用も少なくなりました。さらに、コンピュータにて線源配置や線量配分を決定できるため、より精密な放射線治療が可能です。

舌癌組織内照射 治療風景

舌癌組織内照射 治療風景

高線量率治療ではガイドとなる
チューブを顎の下から貫通させます。
※ 腫瘍のサイズによって、チューブの本数は変わります。
約1時間の処置です。

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舌癌組織内照射 治療風景

治療機器とチューブでつなぎ、リモートコントロールで高線量率線源を腫瘍部分に送り込みます。 一回数分程度の照射を一日二回行います。1週間の治療ですが、入院期間は約3週間になります。

舌癌組織内照射 治療効果

当院での治療成績は、リンパ節転移のないT1-T2という早期癌について、
80-90%の局所制御率と報告しています。

  • 治療前治療前
  • 治療後8年治療後8年
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